カット専門店の定義

此処における「カット専門店」とは以下を定義としている。

・カット施術のみの業務形態である。
メニューはカットのみとし、パーマやカラーなどの技術は施術しない。
・洗髪技術は施術しない。
店内施設に「洗髪施設」がなく、あっても別メニューである。
・剃刀を用いて襟/顔剃りを施術しない。

○衛生管理の現状

カット専門としている全国展開店をベースとして考え、以下を現状とする。

・御客様毎のネックタオル
・御客様毎のネックペーバー
・御客様毎の理容櫛
・低水準消毒/紫外線消毒器

○カット専門店の問題点

洗髪技術を行わないということで、店舗内には「洗浄施設」がない場合が多いのが問題である。ただし「洗髪技術をしない」から「不衛生」というのは、問題点の本質からずれている。
 
「洗浄施設がない」ということは、施術者が御客様毎に「手洗い」を行っていないということになる。つまり、担当した御客様の髪の毛に付着している脂(整髪料を含む)が施術者の手指を介して、次の第三者である御客様に付着することになる。この脂には、菌やウイルスも含まれていると考えられ、直接的または二次的な感染症の原因になるかと思われる。
 
洗髪技術がないため、ドライヤーで刈毛を飛ばすなどの作業工程が発生する。ただし、吸引機で刈毛を吸い取る工程の場合は、以下の点が問題になる。

・吸引口を介した毛髪/頭皮への第三者の脂付着。
・吸引ノズル内から未吸引の第三者のフケ(剥離した頭皮)付着による白癬菌をはじめとする感染、ダニの成虫及び卵のノズル内からの落下。
上記の点から、刈毛吸引直後に吸引オフにしないことや、常に吸引口を下向きにするなどの対応が必要。また、吸引口を使用毎にアルコールウェットティッシュで拭く工程も必要である。

御客様毎に使用する理容櫛は使い捨てとしているが、鋏は低水準消毒(消毒薬に抵抗/耐性をもつ菌以外の微生物へ有効)である紫外線消毒器処理だけである。ただし、一般的理容店では御客様毎の使用済鋏は衛生管理未処理の場合が多く、ましてや革製シザースケースを使用している店舗よりは安全といえる。

○流水施設のないカット専門店における複合洗消毒薬システム/施術

御客様を御案内し、首にはネックタオルとネックペーバーを巻き、刈布が直接触らないように巻く。なお、ネックタオルが御客様毎に未使用タオルなのであれば、ネックペーバーは使用しなくても問題はない。

○流水施設のないカット専門店における複合洗消毒薬システム/ 第一次洗浄消毒工程

・櫛
御客様毎に廃棄。再度第三者に再度使用する櫛の脂汚れなどには、ステンレス皿上に櫛を置き、法定濃度のエタノールを噴霧してティッシュペーパーで拭き取ります。血液を含む重度の脂汚れの場合はステンレス皿上に櫛を置き、高濃度次亜塩素酸水溶液フィリオ30原液(500ppm) に中性ナノ洗剤ロータスクィーンを加えたフィリオ30ナノを全体に噴霧する。 全体噴霧し30秒以上放置後、ティッシュペーパーで拭き取る。 そして、フィリオ30を噴霧してナノ洗浄成分を流し、再度ティッシュペーパーで拭き取る。

*特許生成製品であるフィリオ30は製品独自の第三者試験機関試験結果的により、従来製品とは異なる高濃度条件下での肝炎ウイルスなどの短時間の不活性化が証明されている。また特許生成法による高純度次亜塩素酸製品なために、他の成分による器具などへの影響の低さ/次亜塩素酸の安定性の高さがある。中性ナノ洗剤ロータスクィーンは、特許成分であるナノ洗浄剤により、血液などを含む脂を再結合できないレベルまで分解する。この製品とのみフィリオ30は混合することが可能(30倍希釈)で、「フィリオ30ナノ」としてフィリオ30に強力な脂分解力が加わる。

・手指
シャワーポンプノズル容器に入った高濃度次亜塩素酸水溶液フィリオ30原液を、手指に適当量を噴霧する。揉み洗いをし、キッチンペーパーで水分を拭き取る。アルコールウェットティッシュだけで手指を拭いても、表面的な拭き取りしかされておらず感染症対策にはならない。ATP検査でも表皮が擦れて剥がれた結果と思われるが、拭き取り後の数値が前よりも上昇する結果となっている。重度の脂汚れの場合は、手指に中性ナノ洗剤ロータスクィーン(30倍希釈水溶液)を直接噴霧して揉み洗いした後に、フィリオ30による洗浄工程を行なう。

○流水施設のないカット専門店における複合洗消毒薬システム/ 第二次基礎消毒工程

・櫛
廃棄しない櫛は、法定濃度エタノールを噴霧してティッシュペーパーで拭き取る。

・鋏
高濃度エタノールが含まれている医療用「ワッテ」もしくは、法定濃度エタノールをステンレス皿上で噴霧し、ティッシュペーパーもしくはアルコールウェットティッシュで拭き取る。

○流水施設のないカット専門店における複合洗消毒薬システム/ 第三次保管消毒工程

・櫛
紫外線消毒器にて保管消毒

・鋏
紫外線消毒器にて保管消毒

○考察

カット専門店は頭ごなしに「衛生管理工程がなく不衛生」とする業界の風潮がありますが、施術工程がシンプルなゆえに、衛生管理工程も「使い捨て櫛」「ネックペーバー」「紫外線消毒器」とシンプルになります。ゆえに「衛生管理工程がなく不衛生」という問題定義も大雑把としかいえません。また「低料金店」と比喩されますが「10分単価」で比較すると、これも業態の本質から離れているように感じます。全国展開する理容店としてはカット専門店よりも「剃刀を使用」した「低料金店」という業態での「感染症/衛生管理問題」のほうが、より深刻と思われます。
 
カット専門であり「洗髪しない」ことから「不衛生」と訴えているケースもありますが、「洗髪しない」は御客様のニーズであり「不衛生」とは別問題です。
 
カット専門ゆえに洗髪工程がなく、ゆえに「洗髪設備がないから不衛生」というのは問題着眼点がずれております。着眼すべきは「施術者の手指などの洗浄設備が店舗内にないから不衛生」であり、そこが衛生管理問題の本質です。ただし、洗髪設備を義務付ける各都道府県条例は、結果的には手指などの洗浄設備ともなるため有意義かと思われます。
 
カット専門店における衛生管理問題点の本質が判明すれば「洗浄設備の設置」以外にも問題解決が可能であり、システムは構築されます。同じく「洗浄設備がない」訪問出張理容での複合洗浄消毒システムが応用できるからです。
 
今回の「洗浄設備のないカット専門店における複合洗浄消毒システム」は、「カット専門店」という理容業態における衛生管理システムです。このような提案/指導するのは「行政」ではなく、現場の「理容師」であるべきと私は考えます。

re-yousi.com 藤井実