衛生はまずは基本的な「心がけ」から始まります。いくら奇麗な御店、いくら御洒落な御店でも、保健所の認可を受けていても、衛生宣言のポスターを貼っていても、「衛生コンプライアンス」は御客様には伝わりません。複合消毒システムを導入される前に、まずはココから始めませんか?

基礎知識

・理美容室での消毒の前に知っておきたいこと。


芽胞菌以外の菌を殺すのが「殺菌」芽胞菌を殺すのが「滅菌」

芽胞菌とは、菌体内に芽胞つまり胞子をもつ細菌のこと。通常の細菌と比べて極めて高温に強く、100℃での煮沸によっても完全に不活化することが出来ない。芽胞を高温で完全に不活化するには、オートクレーブ処理(約2気圧の飽和水蒸気中で121℃15分以上)、乾熱処理(180℃30分あるいは160℃1時間以上)などの処理が必要。芽胞を完全に不活化することが可能な条件で、器具や培養液などを処理することを滅菌と呼び、医療器具の扱いや、微生物学や生化学の実験、食品科学などの分野で重要である。滅菌の技術が発達する以前には、間歇滅菌法による滅菌が行われていたが、それでも滅菌に失敗することはあり、芽胞による汚染(コンタミネーション)が問題になることが多く見られた。また高温以外にも、消毒薬などの化学物質にも耐久性を示す。 一般的な消毒薬では次亜塩素酸ナトリウムがやや有効な程度で、塩化ベンザルコニウム(オスバン液)、アルコール類等では不活化する事が非常に困難であり、確実に不活化するには最も強い消毒薬であるグルタラールを長時間接触させる必要がある。他に、エックス線にも高い耐久性を示す。       
 
http://ja.wikipedia.org/wiki/芽胞 より参照
 


理美容室で考えうる最大の消毒対象〜肝炎ウイルス〜

B型肝炎(HBV)は3.2kbの環状の二本鎖DNAとそれを包むエンベロープ(単純ヘルペスウイルスやインフルエンザウイルス、ヒト免疫不全ウイルスなど一部のウイルス粒子に見られる膜状の構造のこと。これらのウイルスにおいて、エンベロープはウイルス粒子の最も外側に位置しており、ウイルスの基本構造となるウイルスゲノムおよびカプシドタンパク質を覆っている。)からなる。B型肝炎ウイルスは遺伝子配列の違いによって、A~Hの8の遺伝子型 (genotype) に分類される。日本はHBV-C型が多くキャリア化しやすい。一方、HBV-B型はセロコンバージョンしやすく一過性感染となることが多く、HBV-A型は最も慢性化。

http://ja.wikipedia.org/wiki/B型肝炎ウイルスより参照

B型肝炎は、B型肝炎ウイルスによって起こる、致命的となり得る肝臓の感染症です。B型肝炎は、主要な世界的健康問題で、ウイルス性肝炎の中では最も重症な型です。慢性肝疾患を起こし、肝硬変や肝がんによる死亡の危険が高くなります。世界中で20億人が感染していると推計されており、2億4千万人以上が慢性の(長期にわたる)肝臓感染症にかかっていると推計されています。また、毎年60万人がB型肝炎の急性または慢性の経過によって死亡しています。
 
B型肝炎ウイルスは、感染した人との血液と血液の直接接触や、精液や膣分泌液によって感染します。感染経路はHIVと同じですが、B型肝炎ウイルスはHIVに比べて50倍から100倍感染力が強いです。また、B型肝炎ウイルスは、HIVと異なり、人の身体の外~乾燥した血液内でも少なくとも7日間は生存することができます。この期間、予防接種を受けていない人の身体にウイルスが入った場合には、感染が成立することがあります。

厚生労働省検疫所 http://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/2012/08280858.htmlより参照

理美容室での衛生管理「トラッド(歴史)」は「公衆衛生」にあり。

 

・シザースケース(バック)

腰につける鋏や櫛などを収納するバック。コンテストやヘアショーなどでの使用は認められるが、理美容室で御客様に施術する「公衆」の現場では使用は保健所は認めていません。内部が「布(ナイロン/革)」でできているために、内部位や飾り部位に「白癬菌」(皮膚糸状菌によって生じる皮膚感染症の一つ)など感染症の原因となる菌の温床になる危険性が大きいです。また、理美容店で「店内感染」を想定すべき「B型肝炎ウィルス(HBV)」は人体から離れても、7日間は生存している事実があります。技術者にしてみれば手元に道具がある便利さはあるが、「公衆衛生」よりも「利便性を重要視」したといえます。御客様にとっては、お店の衛生管理への考え方を判断する基準になるのかもしれません。消毒といいますと「剃刀」ばかり対象になりますが、「鋏」「櫛」も対象として考えなければいけません。御客様と技術者自身の鋏による怪我、頭皮に疾患がある御客様、頭を洗わない御客様への「アタマジラミ」も含む白癬菌やウィルスの院内感染・・「鋏」は「剃刀」以上に御客様と触れる事を忘れては駄目だと思います。感染症の温床になりえるシザースベルト(バック)の危険性は無視できないと思います。
 

・シザースケース(バック)使用における考察

厚生労働省健康局生活衛生課長からの全国の保健所局長へ通達されている衛健基発0618001の書面からは、衛生管理が不適切な事例として「 施術中に器具を消毒せずにシザースケースに収納し、又はシザースケースから取り出した器具を消毒せずに収納」と具体的に書かれ、なおかつ「 シザースケースを介しウイルス等の感染の恐れがある。」と具体的に書かています。

 
「単なる腰にぶら下がっる便利な道具入れ」としか使ってない理美容師さんは、どうお考えになって使われているのでしょうか?理美容師免許は「技術」への免許ではありません。感染症対策も含めた公衆衛生業を自覚する資格なのではないでしょうか?
 
このサイトをご覧になられた御客様の立場で理美容店に行かれる方は。シザースケース(バック)を使用している理美容師さんに感染症予防策をお聞きしてみてください。もし、手術をしている医師が「手術用メス」を同じようにバックに入れていたら、どう思うのでしょうか?
 
通達書には「シザースケースを介しウイルス等の感染の恐れがある。」と書かれており、不適切な使用方法は問題外として、指摘されているシザースケース自体の問題点は
 

・皮(革)製品で、浸透性がある。
・細かな繊維面が、ウイルス/菌の温床になる。
・袋状(細い筒状)は刈毛などが溜まるので不衛生。

 
ならば、手元に鋏がある利便性があるシザースケースを国家資格者として取り入れるには「衛健基発0618001」という書面にヒントがあると思うのです。
 

・皮(革)製品じゃない素材。
・繊維素材じゃない。
・袋状(細い筒状)でなく刈毛などが溜まらない。
・撥水(不浸透性)素材
・鋏や櫛との触れる面積が少ない。
・余計な飾りやポケットなどがない簡易的構造。
・洗浄(清掃)が容易に可能。

 
シザースケース(バック)を制作販売しているメーカーも、この対策を考え始めております。もし、上記条件をクリアしている製品がございましたら教えてください。このサイトでもご紹介したく思います。

流水施設のない店舗における衛生管理不備の考察

フィリオ30ナノ 複合洗浄消毒システムATP測定試験より

 訪問理容において、訪問先で水道による流水洗浄ができない環境を想定した試験を行った。試験物をフィリオ30ナノにて洗浄消毒を行い、洗浄成分をフィリオ30噴霧により流水洗浄を行っている。

ATP測定法(ATPそくていほう)とは、すべての生物の細胞内に存在するATP(アデノシン三リン酸)を酵素などと組み合わせて発光させ、その発光量(Relative Light Unit;RLU)を測定する方法のことである。ATPふき取り検査とも呼ばれる。細胞内の存在するATPは、酵素であるルシフェラーゼなどと反応させることにより発光する。この発光量はATP量が多いほど発光量(Relative Light Unit;RLU)が増す。この方法を利用して、食品業界や医療機関などでは器具の汚染調査、清浄度調査などに利用されている。これは、細菌や残渣などの汚染物質が残っているとATPが存在し、発光することによりモニタリング法として適切な衛生管理が行うことができるとされている。なお、この検査方法は、厚生労働省監修の「食品衛生検査指針微生物編2004」にも掲載されている。現在、ATP測定法により微生物の同定などを行うことはできない。宇宙開発分野では、惑星などで生物が存在しているかどうかの方法としてATP測定法が活用されている。2001年にキッコーマン株式会社が開発したATP測定器「ルミテスターPD-10」、2009年に発売された「ルミテスターPD-20」は、従来のATPだけではなく、ATPが加熱・変形したAMP(アデノシン一リン酸)も測定することができ、より精密な測定が行えるようになった(特許No.3409962)。

ウィキペディアよりhttps://ja.wikipedia.org/wiki/ATP測定法

【試験実施日】平成27年11月2日


【使用薬剤等】
・分散+殺菌剤:フィリオ30ナノ(※)
・殺菌剤:フィリオ30(原液および5倍希釈)


【計測器具】
・ATP計測器:ルミテスター(キッコーマン製)


【洗浄対象物】
・手指


【その他】
・拭取用ウェットティッシュ


【対象物試験方法】
・試験物を理容店にてでた刈毛(人毛)と水溶性性整髪料を混ぜた微温湯水溶液


 【手指】
  試験溶液に浸漬させた手指にフィリオ30ナノを噴霧し10秒擦ります。その後にフィリオ305倍希釈(100ppm)を噴霧により洗浄成分を洗い流して測定。

洗浄前ATP値2,479/洗浄消毒後ATP値22.8(タンパク除去率77.2%)

 【手指】
 試験溶液に浸漬させた手指を、アルコールウェットティッシュで拭取り後に測定。

洗浄前ATP値3,406/洗浄消毒後ATP値5,586(タンパク除去率164.1%)

 【考察】
訪問先で水道水による流水手洗いができないことを想定した試験です。フィリオ30ナノとフィリオ30による洗浄により手指についたタンパク質汚れを除去することができた。しかし、エタノールが含まれたウェットティッシュで拭いた場合では、逆に値が増加しています。これは、ウェットティッシュだけでは感染予防ができないことを示してます。これは手指洗浄する流水施設がない店舗では、技術者の手指が感染源になっている可能性を示唆している。

・手洗い

御客様毎に手を洗う事は、店内感染を防ぐ大切な第一歩です。髪の毛を扱う理美容師にとって、何気なく手指などに着いている刈り毛は気にもならないモノかもしれません。でも、御客様は違います。御客様毎に手を洗う、しいて言うならば頭(髪)を洗うという行為ですら立派な「公衆衛生」を守る第一歩だと思うのです。キチンと習慣づけてください。

・マスク

シェービング時には御客様との直接呼吸交換を避けるため、必ず装着しなければいけない。インフルエンザや結核などの飛沫感染を防ぐ為の予防策。消毒薬や消毒器などでは防ぎきれない「空間」による唯一の院内感染対策です。しかし残念ながら、唯一の対策を怠る技術者が多いのも事実。これも、シザースベルトと並んで御客様にとっては、お店の衛生管理への考え方を判断する基準になるのかもしれません。

・泡取り

顔剃りや襟剃り石鹸の時に泡と剃った毛(ヒゲ)を付けるもの。使い捨ての紙を使用するのが原則です。ゴム皿やスポンジなどの再利用できるタイプのを使い回すのは厳禁です。消毒液に漬け置き消毒するとしても、剃刀の刃から泡を拭う際につける細かい傷の中に細菌などが入り込み、殺菌しきれず二次感染の危険があります。経費的にも、使い捨ての紙タイプを使用するのが「公衆衛生」として原則になります。

・タオル

通常のタオルは、洗濯機で洗剤を入れて洗濯してから干す事により消毒は完了します。ただし、血液付着のタオルを一緒に洗濯機で洗う事は大変危険な行為です。HBVの感染力は非常に強く、洗濯槽内のタオル全体が汚染されると思ってください。他の消毒器も含め、理容店で使用する機器(紫外線消毒器/蒸し器/煮沸消毒器/洗濯機)などは、事前消毒された上での二次使用と考えてください。血液付着があるタオルは、水洗いして入念に血液を洗い流します。そして、塩素系消毒剤による作業を経てからの洗濯機による洗浄作業になります。地域の感染源にならぬように、手間を惜しまないでください。